猫伝染性腹膜炎(FIP)を知ろう!

はじめに
「元気がなくなった」「お腹が膨らんできた」「発熱が続く」――
そんな猫ちゃんに隠れているかもしれないのが、
猫伝染性腹膜炎(FIP)です。
以前は“不治の病”とされていましたが、近年は新しい治療薬も出てきました。
この記事では、FIPの症状や診断、治療、日常で気をつけたいポイントまで、飼い主さんにやさしく解説します。
目次
FIP(猫伝染性腹膜炎)って?
FIPは、「猫コロナウイルス(Feline Coronavirus)」が体内で変異し、全身に強い炎症を起こすことで発症する猫だけの感染症です。
猫コロナウイルス自体は珍しいウイルスではなく、多くの猫が保有していますが、ごく一部の猫でウイルスが体内で変異しFIPになることがあります。
特に子猫や若齢猫、多頭飼育環境の猫でリスクが高い病気です。
- 発熱(抗生剤が効かない、波のある発熱)
- 元気消失・食欲不振・体重減少
- お腹や胸に水がたまる(腹水・胸水/ウェットタイプ)
- 神経症状(ふらつき、けいれん、目の異常など/ドライタイプ)
- 黄疸、貧血、眼の濁り、呼吸困難 など
※症状は進行が早く、数週間で重症化する場合もあります
どうやって診断するの?
- 症状や経過、発熱が抗生剤で改善しないことなどから疑う
- 血液検査(貧血、蛋白バランスの異常、炎症マーカーの上昇など)
- 腹水や胸水の検査(黄色で粘り気のある液体が特徴)
- コロナウイルス遺伝子のPCR検査や抗体検査
- 確定診断は難しいことも多く、総合的に判断
治療について
以前はFIPに「根本的な治療法はない」とされてきましたが、近年は抗ウイルス薬(特にGS-441524など)の登場により治療例が増えています。
- 抗ウイルス薬を中心とした治療
(日本では未承認薬もあり、個々の動物病院で対応が異なる場合があります) - 対症療法
点滴、栄養サポート、腹水・胸水除去、制吐薬など - 二次感染予防のための抗生物質、消炎薬などの併用
- 症状や合併症に応じてステロイドや免疫調節薬を使うことも
- 継続的なモニタリングと長期的なサポートが必要
日常で気をつけたいこと
- 多頭飼育ではトイレ・食器を清潔に、共用を避ける
- 体調変化(元気消失、発熱、腹囲の膨らみなど)を見逃さず、早めに動物病院へ相談
- 治療中・治療後も、栄養管理・ストレスの少ない環境作りを意識する
治療で使う主なお薬と副作用
抗ウイルス薬
GS-441524
作用機序:
FIPウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害し、ウイルスの複製を抑制します。
投与方法
経口または注射
副作用
軽度の肝酵素上昇、嘔吐、下痢などが報告されていますが、重篤な副作用は少ないとされています。
レムデシビル
作用機序
GS-441524のプロドラッグであり、体内でGS-441524に変換され、同様の作用を示します。
投与方法
注射
副作用
注射部位の痛み、肝酵素の上昇、嘔吐などが報告されています。
モルヌピラビル
作用機序
ウイルスのRNAにエラーを導入し、複製を阻害します。
投与方法
経口
副作用
肝障害、食欲不振、嘔吐、下痢、脱毛、耳の先端の変形などが報告されています。
MUTIAN(ムティアン) / CFN
作用機序
GS-441524を模倣したとされる抗ウイルス薬で、ウイルスの複製を抑制します。
投与方法
経口または注射
副作用
肝機能の低下、消化器症状(下痢や嘔吐)、貧血などが報告されていますが、重篤な副作用は少ないとされています。
対症療法薬
点滴治療(輸液剤)
作用
脱水・ショックの改善、腎臓や肝臓のサポート。
副作用
過剰投与による浮腫、心不全など。
抗生物質(アモキシシリン、セファレキシン等)
作用
二次感染(細菌感染)を予防・治療。
副作用
下痢、嘔吐、アレルギー反応など。
制吐薬(マロピタント等)
作用
嘔吐・食欲不振の緩和。
副作用
まれに元気消失、下痢。
消炎薬・ステロイド(プレドニゾロン等)
作用
炎症や免疫反応の抑制。症状緩和目的で使用。
副作用
多飲多尿、食欲増加、免疫抑制、消化器症状など(長期使用に注意)。
まとめ
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、難治性の病気ですが新しい治療法の登場により治療例が増えています。
「なんとなく元気がない」「お腹が膨らんできた」など、些細な変化を見逃さず、早めに相談することが猫ちゃんの命を守ります。

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