犬猫の胸水――「呼吸が苦しそう」は要注意、胸にたまる“水”の正体

はじめに

「わんちゃん・ねこちゃんの呼吸が苦しそう」「お腹や胸が膨らんできた」「動きたがらずぐったりしている」――
そんな時に疑われる重い病気のひとつが胸水です。

目次

胸水って?

胸水とは、心臓と肺に囲まれた「胸腔」というスペースに、本来ほとんどないはずの水分(液体)がたまってしまう状態です。
この水分がたまることで、肺が膨らみにくくなり、呼吸が苦しくなります

  • 呼吸が浅く、速くなる(努力呼吸)
  • 開口呼吸(口を開けて呼吸)
  • 呼吸のたびにお腹が大きく動く(腹式呼吸)
  • 運動を嫌がる、すぐに疲れる
  • ぐったりして動かない
  • 舌や歯ぐきが紫色になる(チアノーゼ)

治療について

  • 胸水の排液(胸腔穿刺):たまった液体を針で抜き、呼吸を楽にする
  • 酸素吸入や安静管理
  • 原因の治療(心臓病、腫瘍、感染症など)
     ・心不全→利尿薬や心臓薬
     ・腫瘍→抗がん剤や外科手術
     ・感染症→抗菌薬や対症療法
     ・乳び胸→食事療法や手術

症状や原因によっては、継続的な排液や入院管理が必要なこともあります。

おうちで気をつけたいこと

  • 呼吸が苦しそう、動きたがらない、舌が紫色などのサインに気づいたらすぐ受診
  • 持病のある子は定期検査と薬の継続を
  • 排液後も再発しやすいので、こまめな観察を

治療で使われる主な薬と副作用

胸水除去(胸腔穿刺:ドレナージ)

胸腔穿刺(胸水の抜去)

作用
胸腔にたまった液体を直接抜き、呼吸を楽にします。即効性のある処置です。
副作用
まれに穿刺部の出血、ショック、虚脱(ごく稀)、再貯留。
利尿薬(うっ血性心不全や腎疾患に伴う場合)

フロセミド(ラシックス®)

分類
ループ利尿薬
作用
体にたまった余分な水分を排出し、胸水や全身のむくみを改善します。
副作用
脱水、食欲不振、頻尿、低カリウム血症、腎機能悪化。
原因疾患への治療

抗生剤(感染性胸膜炎の場合:アモキシシリン等)

作用
細菌感染を治療し、再発を防ぎます。
副作用
下痢、食欲不振、嘔吐、まれにアレルギー反応。

抗腫瘍薬・化学療法(腫瘍性胸水の場合)

作用
腫瘍の進行抑制や胸水の再発防止。
副作用
吐き気、食欲不振、脱毛、白血球減少、免疫低下など。
酸素療法

酸素吸入・酸素室

作用
呼吸のサポート。
副作用
特になし(病院管理下で実施)。

まとめ

胸水は呼吸困難やぐったりなど、命に関わる重大な症状を引き起こす状態です。
早期発見・早期治療がとても大切なので、「呼吸がおかしい」「動かない」と感じたらすぐに動物病院にご相談ください。

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