犬の前立腺疾患――「オスのシニア犬」で増えるおしっこ・血尿・便秘のサイン

はじめに
「最近オス犬のおしっこの様子がおかしい」「血尿が出る」「便が出にくそう」――
そんなとき、“前立腺”の病気が隠れているかもしれません。
目次
前立腺疾患って?
前立腺の病気は、大きく分けて以下の種類があります。
- 前立腺肥大(良性前立腺過形成)
加齢や男性ホルモンの影響で前立腺が大きくなる - 前立腺炎
細菌感染などによる炎症 - 前立腺嚢胞や膿瘍
液体や膿がたまる - 前立腺腫瘍(がん)
悪性腫瘍も発生することがあります(特に去勢後の高齢犬でやや多い)
- おしっこの回数や量が増える、出にくい
- 血尿が出る
- 排便時に便が細くなる、便秘気味
- お尻の周りを気にする、痛がる
- 元気や食欲の低下、発熱(炎症や膿瘍の場合)
- 歩き方がぎこちない、後ろ足をかばう(重症例)
特に去勢していない中高齢のオス犬で多く見られます。
治療について
前立腺疾患の種類によって治療が異なります。
- 前立腺肥大:去勢手術が最も効果的。ホルモン療法を使うこともあります。
- 前立腺炎・膿瘍:抗生剤や点滴治療。重症例では外科的な処置が必要な場合も。
- 前立腺腫瘍:外科手術や抗がん剤治療。ただし進行が早いことが多い。
おうちで気をつけたいこと
- おしっこや便の様子を毎日チェック
- 高齢のオス犬は定期健診をおすすめします
- しきりにお尻を気にしたり、痛がる様子があればすぐに受診
- 早めの去勢手術は、前立腺肥大や炎症の予防に有効です
治療で使われる主な薬と副作用
去勢手術
去勢手術(精巣摘出)
作用
男性ホルモン(アンドロゲン)を減らし、前立腺肥大を根本的に治します。
副作用
麻酔リスク、術後の痛みや腫れ、体重増加傾向。
抗生剤(前立腺炎や細菌感染例)
エンロフロキサシン、アモキシシリン、トリメトプリム・スルファ剤など
作用
前立腺や尿路の細菌感染を抑えます。
副作用
下痢、食欲不振、嘔吐、まれにアレルギー反応。
抗がん剤(前立腺腫瘍・悪性例)
カルボプラチン、ドキソルビシンなど
分類
抗腫瘍薬・化学療法薬
作用
進行した前立腺がんの増殖抑制や延命を目的に使われることがあります。
副作用
吐き気、食欲不振、脱毛、白血球減少、免疫低下、腎障害や心臓への負担(薬による)。
鎮痛薬・補助療法
NSAIDs(カルプロフェン等)、オピオイド鎮痛薬(ブトルファノール等)
作用
腫瘍や炎症に伴う痛みの緩和。
副作用
胃腸障害、食欲不振、腎障害(NSAIDs)、眠気、便秘(オピオイド)。
まとめ
前立腺疾患はオス犬の高齢期に多い泌尿・生殖器の病気です。
「おしっこのトラブル」「血尿」「便秘」など、ちょっとした変化も見逃さず、早めにご相談ください。
適切な治療で、ワンちゃんが元気に過ごせるようサポートいたします。

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