巨大結腸症――「便が出ない」「お腹が張る」その陰に潜む慢性便秘

はじめに

「猫ちゃんがお腹が張って苦しそう」「何日も便が出ない」「排便時に強くいきんでいる」――
そんな症状が続くときは巨大結腸症という病気が隠れているかもしれません。

目次

巨大結腸症って?

巨大結腸症は、結腸(大腸の一部)が異常に拡張し、内容物(便)が大量にたまって排出できなくなる状態です。
本来、結腸はぜん動運動(腸の動き)で便を送り出しますが、その動きが弱くなったり、神経がうまく働かなくなることで「慢性的な便秘」と「お腹の張り」が続きます。

  • 何日も便が出ない、頻繁に便秘を繰り返す
  • 排便時に強くいきむが、なかなか便が出ない
  • 便がとても大きく、硬い
  • お腹が張って苦しそう
  • 食欲低下、嘔吐、元気消失
  • 進行すると脱水、体重減少、重症例ではぐったり・命に関わることも

猫(特に中高齢のオス猫)でよくみられますが、犬でも起こります。

治療について

  • 軽度の場合:食事療法(繊維質の多いフード)、下剤、水分摂取の工夫
  • 重度の場合:浣腸や点滴で便をやわらかくし、手で便をかき出す処置(摘便)が必要なことも
  • 根本的な原因があればその治療(骨盤の手術など)
  • 薬で改善しない重症例は、結腸の一部を切除する外科手術(結腸切除術)を行うことも

おうちで気をつけたいこと

  • 便や排便の様子を毎日チェック
  • 便秘が続いたら早めに受診・相談
  • 繊維質の多い食事や十分な水分補給を心がける
  • 猫の場合は清潔なトイレ環境を整える

治療で使われる主な薬と副作用

下剤(便をやわらかくする薬)

ラクツロース(ラグノス®、ラクトフェリン®など)

作用
腸内の水分量を増やし、便を柔らかくし排便を促進。
副作用
下痢、腹部膨満感、まれに電解質異常。

ミララックス®(ポリエチレングリコール:PEG)

作用
腸内に水分を保ち、便のカサを増やして排便を助ける。無味無臭で使いやすい。
副作用
下痢、腹部不快感、まれに脱水。

コンスーベン®(ピコスルファートナトリウム)

作用
大腸を刺激して排便を促進する刺激性下剤。即効性あり。
副作用
腹痛、下痢、電解質異常。

酸化マグネシウム(マグミット®など)

作用
腸管の水分を増やし、便を柔らかくする。慢性便秘の補助に。
副作用
下痢、高マグネシウム血症(特に腎疾患時は注意)。
消化管運動促進薬

プロナミド(モサプリド)

作用
消化管の蠕動運動を促進する。猫の巨大結腸症にも補助的に用いられる。
副作用
まれに下痢や軟便、軽い興奮や食欲増進がみられることがあります。

プリンペラン(メトクロプラミド)

作用
消化管の運動を促進し、便の移動をサポート。
副作用
まれに眠気、ふるえ、落ち着きのなさなどの神経症状や下痢を起こすことがあります。
浣腸薬・摘便

グリセリン浣腸

作用
グリセリン液を肛門から注入し、腸壁を刺激・浸透圧を高めて便を柔らかくし、排便を促します。
主に急性の重度便秘や巨大結腸症で即効性の排便補助として使用されます。
副作用
肛門や直腸の刺激による痛み、粘膜損傷、まれに下痢や脱水。
食事療法・サプリメント

高繊維食・可溶性繊維サプリ

副作用
便が柔らかくなりすぎる場合や、体質により逆に便秘が悪化することがあります。

まとめ

巨大結腸症は、慢性的な便秘やお腹の張りが続くときに疑うべき病気です。
「便が出ない」「お腹が苦しそう」などの変化を見逃さず、早めの相談・治療で猫ちゃん・ワンちゃんの負担を減らしてあげましょう。
重症例では命に関わることもあるので注意が必要です。

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