「まだ早い?それとも遅い?」手術のタイミング、ちゃんと知っておこう!

「手術って必要なんですか?」
「いつ頃受けさせればいいんですか?」
「うちの子はまだ小さいけど大丈夫?」

そんな疑問を持つ飼い主さんに、
避妊・去勢のメリット、適切な時期、最近の考え方まで、わかりやすく解説していきます。

目次

避妊・去勢って何のためにするの?

「子どもを産ませる予定がないなら避妊(女の子)・去勢(男の子)しましょう」
と言われたことがある方も多いと思います。

その理由は、以下のような大きな目的とメリットがあるためです。

望まない妊娠を防ぐ

特に猫は発情が早く、室内飼いでも脱走や多頭飼育で妊娠してしまうケースがあります。

発情に伴うストレスや問題行動の予防

夜中に鳴く、落ち着きがない、マーキングをする、攻撃的になる…
これらは発情に伴うホルモンの影響による行動で、手術により軽減または防止できます。

病気の予防

避妊・去勢手術は、生殖器関連の病気を予防する上でも非常に重要です。

動物予防できる主な病気
子宮蓄膿症、乳腺腫瘍(特に初回発情前の手術でリスク大幅減) など
前立腺疾患、肛門周囲腺腫、精巣腫瘍 など
子宮・卵巣疾患、乳腺腫瘍(悪性率が高い) など
尿スプレー、ケンカによる感染症、精巣腫瘍 など

手術の時期について【犬・猫別に詳しく解説】

2023年に行われた日本国内の調査では、
動物病院の約84.7%が犬猫ともに 生後6ヶ月齢以降での手術 を推奨していることがわかっています。
​その理由として、以下の点が挙げられています。​

  • 発育・形成不全への懸念:​成長過程での手術が、体の発育に影響を与える可能性があるため。​
  • 麻酔リスクの考慮:​幼齢での麻酔に対する安全性を重視するため。​
  • 乳歯の抜歯との同時実施:​乳歯遺残がある場合、手術と同時に抜歯を行うことができる。
    (通常、生後4〜6ヶ月で永久歯に生え変わります)


とはいえ、これらはあくまで「一般的な目安」
病院や獣医師ごとに考え方や方針に違いがあるのも事実です。

以下に、犬と猫それぞれの「避妊・去勢の目安」をまとめました。
ご自身のわんちゃん・ねこちゃんに当てはめながら参考にしてみてくださいね。

犬の避妊・去勢の目安

  • 女の子(♀):生後7〜8ヶ月以降
     → 初回発情を確認後、1〜2ヶ月後の手術が望ましいとされることが多いです。
     → 一方で、発情前の手術を推奨する病院もあり、方針は獣医師によって異なります。
  • 男の子(♂):生後7〜8ヶ月以降

猫の避妊・去勢の目安

  • 女の子(♀):生後6ヶ月以降
  • 男の子(♂):生後7〜8ヶ月以降

猫は特に早く発情が始まる子もいるため、手術時期を早めに調整することもあります。

先生によって「おすすめの時期」が違うのはなぜ?

飼い主さんの中には、

「前の病院では“早めがいい”って言われたのに、今の先生は“少し待ちましょう”って…?」

と戸惑われる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、これは先生ごとに異なるアプローチで“その子にとってのベスト”を考えているからなんです。

具体的には…

  • 体格・性格・生活スタイルに合わせている
  • 発情前/発情後、それぞれのリスクとメリットを比較している
  • 最新の研究や海外ガイドラインをどのように取り入れるかは病院によって異なる

つまり、考え方の違いは「最善を尽くす姿勢の違い」


迷われる方は、ぜひ かかりつけの先生と納得がいくまで相談 してみてくださいね。

近年の研究では、こんな考え方も

避妊・去勢の時期に関しては、近年の研究や国際的なガイドラインの中でさまざまな見解が出ています。

猫の場合:早期避妊去勢が推奨傾向

生後5ヶ月齢までの手術が推奨される流れが強まっているようです。
 → 発情前の手術で乳腺腫瘍の発生率が大幅に減る
 → 幼齢でも麻酔・手術の安全性が確保されている
 → 発情行動や予期せぬ妊娠の予防にも効果的

犬の場合:体格や犬種により「慎重派」も

  • 特に大型犬では骨や関節の成長への影響が懸念され、性成熟(12ヶ月齢以降)後の手術を勧める考え方もあります。
  • 一部の犬種では、早期手術ががんや整形疾患のリスクに関わる可能性も指摘されています。

参考文献

  1. Spay Vets Japan(2023). 日本猫の乳腺腫瘍と避妊手術の時期に関する研究.
     初回発情前に避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍の発生リスクが90%以上減少する可能性について報告。
     https://spayvetsjapan.org/info/mammary_tumor_research
  2. American Veterinary Medical Association (AVMA). Early-age spay/neuter of dogs and cats.
     生後2ヶ月齢からの避妊・去勢手術に関する安全性と利点についての文献レビュー。
     https://www.avma.org/resources/pet-owners/petcare/early-age-neutering-pets
  3. University of California, Davis School of Veterinary Medicine 紹介記事.
     犬の避妊・去勢と健康リスク – DOG MAGAZINE(2024年5月).
     大型犬における去勢手術の時期と骨関節疾患の関連について紹介。
     https://dog-magazine.jp/health/spay-neuter-large-breeds/
  4. Spay Vets Japan(2023). 国内アンケート調査結果:避妊去勢手術の実施時期に関する意識調査.
     日本の動物病院の約84.7%が「生後6ヶ月齢以降」での手術を推奨している現状を報告。
     https://spayvetsjapan.org/survey/23060301_listen.html

術後の体重管理と生活習慣

避妊・去勢手術後は、身体に大きな負担をかけるだけでなく、
ホルモンバランスの変化によって太りやすくなる傾向があります。

そのため、手術後は「安静にさせること」と同じくらい、
「体重管理」や「生活スタイルの見直し」も大切なポイントです。

  • 太りやすくなる理由
     手術後は性ホルモンの分泌が減少することで、代謝が落ちたり、食欲が増す子もいます。
  • 食事量の見直し
     術後すぐから、従来の量よりやや控えめに調整することが推奨されます。
     避妊・去勢後用のフードやカロリー管理されたごはんに切り替えるのもひとつの方法です。
  • 運動・遊びの時間も意識的に
     安静期間が明けたら、適度な運動やお散歩、室内遊びをしっかり取り入れていきましょう。
     猫ちゃんには、おもちゃやキャットタワーで遊びを促すのも効果的です。

最後に

避妊・去勢手術は、決して「かわいそう」なことではなく、

愛犬・愛猫が健康で、安心して長生きできるようにする

そんな「家族としての思いやりのかたち」だと私は思っています。

もちろん、どんな手術にもリスクはゼロではありません。
だからこそ、
丁寧にご説明し、ご家族のお気持ちに寄り添いながら、最良の選択を一緒に考えていくことを大切にしています。

もし、少しでも迷いや不安があれば、どうぞお気軽にご相談ください

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