皮膚だけじゃない!内臓型も要注意――犬猫の肥満細胞腫

目次

肥満細胞腫(MCT)って?

肥満細胞腫(Mast Cell Tumor, MCT)は、犬・猫どちらにも発生する「肥満細胞」のがんです。
特に犬では皮膚型が最も多く猫では皮膚型だけでなく脾臓型や消化管型など内臓型も比較的よくみられます。
発生部位や進行の仕方によって、症状や治療・予後が大きく異なります。

型ごとの特徴と症状

主な特徴
皮膚や皮下に1個または複数のしこりができます。大きさや形は様々。時に赤くなったり、かゆみ・潰瘍・出血を伴うことも。
症状
しこり、赤み、かゆみ、急な増大、潰瘍、出血
犬では皮膚型が最も多い。猫も皮膚型あり(特に若齢猫で発生しやすい)。

治療について

皮膚型

  • 外科的切除が第一選択
    広いマージンで取りきることで完治が望める例も多い
  • 高グレードや再発・転移例
    抗がん剤(ビンブラスチン、ロムスチン)、分子標的薬(トセラニブ/パラディア®)を併用
  • プレドニゾロンや抗ヒスタミン薬で症状緩和やショック予防

脾臓型

  • 脾臓摘出手術(脾臓の全摘)が治療の基本
    特に猫では、手術により症状が劇的に改善することも多い
  • 術後または切除不能例、全身性に転移した場合
    化学療法(ロムスチンなど)を検討
  • 猫の脾臓型は皮膚型より悪性度が高い傾向があるが、脾臓摘出で1年以上元気に過ごせる例も

消化管型

  • 腸管の部分切除手術が治療の基本
    手術で腫瘍部位を除去できれば一時的な回復も期待できる
  • 転移例や複数発生例
    化学療法(ロムスチン・ビンブラスチン等)、分子標的薬の追加を検討
  • 消化管穿孔や閉塞の場合は緊急手術が必要なことも
  • 猫の消化管型は高齢・進行例が多く、全身管理や栄養サポートも重要

治療で使う主なお薬と副作用

トセラニブ(パラディア®)

作用

  • 「分子標的治療薬(チロシンキナーゼ阻害薬)」です。
  • がん細胞が成長・血管新生に必要とするシグナル伝達c-KITやVEGFRなど)をピンポイントで阻害し、腫瘍細胞の増殖・生存を妨げる作用があります。
  • 特にc-KIT遺伝子変異を持つ肥満細胞腫で高い効果を示します。

投与のポイント

  • 経口投与(1日おき、週3回などプロトコールによる)。食後投与が推奨されます。
  • 投与開始前後は定期的な血液検査・血圧測定が必要。

副作用

  • 消化器症状(下痢、嘔吐、食欲不振)
  • 骨髄抑制(白血球減少、貧血)
  • 体重減少、だるさ、口内炎、肝酵素上昇
  • 高血圧・蛋白尿(まれだが重篤化することがあるため注意深い管理が必要)
  • 副作用が強い場合は休薬や減量で調整
イマチニブ

作用

  • 分子標的治療薬(チロシンキナーゼ阻害薬)の一つです。
  • がん細胞の成長や血管新生に必要なシグナル伝達(特にc-KIT)をピンポイントで阻害し、腫瘍細胞の増殖・生存を妨げます。
  • 特にc-KIT遺伝子変異を持つ肥満細胞腫で高い効果を発揮します。

投与のポイント

  • 経口投与(毎日または1日おき、プロトコールによる)。
  • 食後投与が推奨されます。
  • 投与前後は定期的な血液検査・肝機能検査が必須で、必要に応じて血圧や蛋白尿もチェックします。

副作用

  • 食欲不振、嘔吐、下痢、脱力、体重減少
  • 骨髄抑制(白血球減少・貧血)
  • 浮腫や発疹が見られることがある
  • まれに重度の肝機能障害や出血傾向が出ることもあり、定期的な血液・肝機能検査が必須です
ビンブラスチン(オンコビン®等)

作用

  • 「抗微小管薬(ビンカアルカロイド)」に分類され、がん細胞の細胞分裂(有糸分裂)を強力に阻害します。
  • 特に肥満細胞腫を含む多くの「血液腫瘍」「皮膚腫瘍」に有効です。

投与のポイント

  • 主に静脈内投与。治療プロトコールに従い週1回程度投与されることが多いです。
  • 単剤での投与より、多剤併用(ロムスチン、ステロイドなど)で効果増強を目指す。

副作用

  • 骨髄抑制(白血球減少、感染症リスク増大)
  • 消化器症状(嘔吐、下痢、食欲不振)
  • 脱毛(特にプードルやシーズーなどの長毛種で目立つ)
  • 神経症状(ごくまれに歩行異常や筋力低下)
  • 静脈外漏出時は皮膚壊死のリスクあり。注射時は注意が必要
ロムスチン(CCNU, ロムスチン®)

作用

  • 「ニトロソウレア系アルキル化薬」。DNAを化学的に傷つけ、がん細胞の増殖・分裂を抑える薬です。
  • 脂溶性が高いため、皮膚腫瘍や中枢神経型腫瘍、内臓型肥満細胞腫にも有効とされています。

投与のポイント

  • 内服薬(カプセル)で、通常3~4週間ごとに投与。
  • 肝障害リスクが高いため、肝機能検査を定期的に行いながら投与します。

副作用

  • 骨髄抑制(白血球・血小板・赤血球減少。感染症・出血リスク増大)
  • 肝障害(GPTやALPなど肝酵素上昇。重症例では黄疸や食欲廃絶も)
  • 消化器症状(嘔吐、下痢、食欲不振)
  • まれに肺線維症や腎障害も報告あり
プレドニゾロン(ステロイド)

作用

  • 強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を持つステロイド剤です。
  • 肥満細胞腫の場合は、腫瘍細胞そのものの増殖抑制効果と同時に、ヒスタミンなどの化学物質放出による全身症状(ショック・潰瘍等)を緩和します。

投与のポイント

  • 単独で使うことも、他の抗がん剤と併用することも多い。内服薬が主流。
  • 長期投与時は副作用モニタリングが必須。

副作用

  • 多飲多尿、多食、体重増加
  • 免疫抑制(感染症リスク増加)
  • 筋力低下、腹部膨満、皮膚萎縮、毛の変化
  • 糖尿病発症リスク(特に猫で要注意)
  • 長期大量投与で消化性潰瘍や膵炎、肝障害の可能性も
抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン等)

作用

  • 肥満細胞腫が分泌するヒスタミンによるアレルギー反応(かゆみ・発赤・蕁麻疹・胃潰瘍)を抑制します。
  • 治療中・手術時のショックや胃腸障害予防にも重要。

投与のポイント

  • 経口または注射で投与。皮膚症状や胃腸症状の緩和に使われます。

副作用

  • 眠気、口渇、軽いふらつき(犬猫で出現しやすい)
  • まれに消化器症状や興奮(特に猫)
  • 過量投与で中枢神経症状が出ることもあるため適切な量を守る

日常で気をつけたいこと

  • 皮膚・体表のしこり、腹部の張り、急な体調変化、食欲・元気の低下など、どんな変化も見逃さない
  • 治療後も再発や新たな腫瘍に注意し、定期検診を継続
  • 薬や治療の副作用が出た場合は早めに獣医師に相談
  • 犬も猫も、しこりや元気消失などを感じたらすぐ動物病院へ

予後(生存期間)

皮膚型(低悪性度・完全切除)
犬猫とも2年以上元気に過ごせることが多い
皮膚型(高悪性度や転移例、不完全切除)
数ヶ月~1年未満が中心、追加治療で延命も可能
脾臓型・消化管型
治療しても数ヶ月~半年未満が多いが、猫の脾臓型は摘出手術で1年以上生存する例も

治療後も再発や新規発生(犬猫で10~15%程度)があるため、定期的な検診・観察が重要

まとめ

肥満細胞腫は、犬にも猫にも発生する“油断できない腫瘍”です。

皮膚型は早期発見・手術で長期生存も可能ですが、脾臓型・消化管型は発見時に重症化していることが多く、治療法や予後も異なります。

いずれの型も、定期的な健康チェックと早めの受診がとても大切です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次