血管肉腫――突然起こる出血やショックに注意したい腫瘍

目次
血管肉腫って?
血管肉腫は血管の内側にある細胞(血管内皮細胞)ががん化した、とても悪性度の高い腫瘍です。
犬で特に多く、脾臓・肝臓・皮膚・皮下、さらに心臓(特に右心房)にもできることが大きな特徴です。
また、転移率が高いのも特徴です。
猫でもまれに発生しますが、犬ほど一般的ではありません。
- 脾臓・肝臓型
急な元気消失、虚脱、腹部膨満、貧血、急な腹腔内出血によるショックや死亡 - 心臓型(特に右心耳)
失神、呼吸困難、虚脱、心囊水貯留、心タンポナーデ、突然死 - 皮膚・皮下型
皮膚に赤黒いしこり、出血や潰瘍、急に大きくなる場合も - 進行例では
体重減少、食欲不振、黄疸、腹水、頻脈など多彩な全身症状
治療について
- 外科手術(脾臓・皮膚型)
脾臓や皮膚の腫瘍は、可能な場合は外科的切除が第一選択。脾臓全摘で一時的に症状が改善することも。 - 化学療法(抗がん剤)
ドキソルビシン(アドリアシン®)を中心に、手術後の補助療法や切除不能例で使用。 - 心臓型の場合
外科的切除は難しいことが多く、ドキソルビシン等の化学療法や、出血対策・心囊水除去(心嚢穿刺)などの支持療法が中心。 - 支持療法
輸血、点滴、痛み止め、栄養管理など
日常で気をつけたいこと
- 急な元気消失や虚脱、腹部膨満、失神、皮膚の赤黒いしこりなど異変があれば、迷わず早めに動物病院へ
- 大型犬種のシニア期は特に定期健診・超音波検査などでの早期発見が重要
- 治療後も再発・転移に注意し、こまめな体調観察を続ける
- 心臓型の場合は突然死もあるため、体調急変時はすぐ相談を
治療で使う主なお薬と副作用
ドキソルビシン(アドリアシン®)
作用
DNA合成阻害で腫瘍細胞を破壊。血管肉腫で最も標準的な抗がん剤。
副作用
骨髄抑制(白血球・血小板減少)、嘔吐・下痢、食欲不振、脱毛、心毒性(特に高用量時)。
ミトキサントロン(ノバントロン®)
作用
ドキソルビシンに類似したDNA合成阻害薬(アントラサイクリン系に近い構造)。ドキソルビシンの代替や、再発例・心臓副作用リスクが高い場合に使用される。
副作用
骨髄抑制(白血球・血小板減少)、嘔吐、下痢、食欲不振、肝機能障害、ドキソルビシンより心毒性はやや軽度。
プレドニゾロン(全身状態が低下している場合の緩和ケアとしても使用)
作用
強力な抗炎症・免疫抑制作用。腫瘍細胞の増殖抑制効果もあるが、血管肉腫では主に疼痛緩和・食欲増進・QOL維持のために緩和ケアとして使われる。
副作用
多飲多尿、食欲増加、免疫抑制、筋力低下、糖尿病リスク、長期高用量で消化性潰瘍や肝障害など。
その他の支持療法
痛み止め・輸血・輸液
疼痛管理や出血、貧血の補助治療。
予後(生存期間・Blackwell’s等より)
脾臓型・肝臓型・心臓型
いずれも非常に悪性度が高く、治療しない場合の平均生存期間は1~2ヶ月未満
外科手術+抗がん剤(ドキソルビシン)
中央値3~6ヶ月
ごく一部で1年超生存例もあるが、再発・転移率が非常に高い
心臓型
突然死のリスクも高く、QOL維持と苦痛緩和が大きな目標
まとめ
血管肉腫は犬(特に大型犬)で多い、進行が非常に速い悪性腫瘍です。
脾臓・肝臓・皮膚だけでなく心臓にもできるため、急な元気消失やショック症状は要注意。
早期発見・治療開始で「元気な時間」を伸ばせることもあるので、ちょっとした異変も放置せず早めに受診しましょう。

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