歩き方・動きの変化は「股関節形成不全」のサインかも

はじめに

股関節形成不全は、特に大型犬の飼い主さんにとって耳にする機会が多い疾患のひとつです。

「階段の昇り降りを嫌がる」「散歩をあまりしたがらなくなった」——そんな変化に気づいたとき、もしかしたら股関節形成不全が隠れているかもしれません。

目次

股関節形成不全ってどんな病気?

股関節形成不全は、太ももの骨(大腿骨)と骨盤側の「受け皿」(寛骨臼)がうまく噛み合わず、成長の過程で股関節がゆるくなってしまう病気です。
この“ゆるみ”が原因で、関節が不安定になり、やがて軟骨や骨がすり減って「変形性関節症」へと進行します。

特に大型犬種(ラブラドール、ゴールデンレトリバー、シェパードなど)で多く見られますが、実は小型犬や猫にも発症することがあります。

  • 活動性の低下、立ち上がり・階段昇降の困難
  • 後肢の跛行(片側または両側)
  • 「ウサギ跳び」やお尻を振る歩き方
  • 股関節の触診で痛み(特に伸展時)、可動域の減少、関節のゴリゴリ音(クレピタス)
  • 太ももの筋肉の萎縮

治療について

治療は大きく分けて「内科的治療(手術をしない方法)」と「外科的治療(手術)」があります。
どちらが合っているかは、その子の年齢や症状の重さ、生活スタイルによって異なります。

  • 内科的治療(保存療法)

軽症や手術が難しい場合に選ばれます。
まずは体重管理が重要で、太りすぎは関節への負担を大きくします。
無理のない運動(水遊びなどもおすすめ)や、関節サプリメントの利用も効果的です。

痛み止めや炎症止めのお薬(NSAIDsなど)で日常生活を快適に保ちつつ、必要ならリハビリも取り入れます。

  • 外科的治療(手術)

進行した例や若い子で重度の場合は手術が検討されます。
人工股関節全置換術(THR)は「また元気に歩けるようになった!」という声も多い治療法です。
体重が軽い子やコストを抑えたい場合は、大腿骨頭切除術(FHO)も選択肢になります。

日常で気をつけてほしいこと

  • 体重管理が何よりも大切です
    太らせすぎないことで、関節への負担を減らします。
  • 運動は無理せず適度に
    激しいジャンプや急なダッシュは控えめにして、関節にやさしい運動を取り入れてあげてください。
  • 小さな変化も早めにご相談を
    「歩き方がおかしい」「散歩に行きたがらない」など、普段と違う様子があれば早めに受診を。

治療で使う主なお薬と副作用

痛み止め・炎症を抑える薬(鎮痛・抗炎症)

NSAIDs(メロキシカム、フィロコキシブなど)

作用
炎症を抑えて痛みを和らげる働きがあります。関節炎の動物のQOL改善に非常に重要です。
副作用
胃や腸への刺激で嘔吐や下痢、ごくまれに胃潰瘍や腸炎を起こすことがあります。また、肝臓や腎臓への負担がかかるため、持病がある子や高齢の動物には特に注意が必要です。

オピオイド系鎮痛薬(ブプレノルフィンなど)

作用
中枢神経に作用して、強い痛みを抑えます。NSAIDsだけではコントロールが難しい痛みに用いられます。
副作用
眠気、食欲低下、便秘など。ごくまれに多動や興奮が見られる場合もあります。
サプリメント・補助療法

グルコサミン・コンドロイチン、オメガ3脂肪酸

作用
関節軟骨の構造維持や、炎症抑制をサポートします。補助的な役割として使われることが多いです。
副作用
ほとんどありませんが、まれにお腹がゆるくなる(下痢や軟便)ことがあります。

カルトロフェン(カルトロフェン・ベット®)

作用
関節軟骨や関節液の健康維持、炎症軽減をサポート。定期的な注射で術後ケアや関節症の進行抑制に。主に週1回の皮下注射を数回行うプロトコルが一般的です
副作用
まれに注射部位の腫れやアレルギー反応。また、出血を助長するため膀胱炎などのがある場合は注意。
その他の治療薬

ステロイド薬

作用
強力な抗炎症作用により、重度の炎症や腫れを短期間で抑えます。通常は短期間限定で使用します。
副作用
多飲多尿、食欲増加、免疫力低下、糖尿病のリスク増加、筋肉の萎縮など。長期投与は推奨されません。

まとめ

股関節形成不全は、早期発見・早期治療、そして日々のケアで進行を防ぐことができます。
「なんとなく歩き方が変わったかも?」そんな時こそ早めのご相談が大切です。

ご家族と動物たちが、いつまでも元気に過ごせるように、私たちもサポートします。
気になることがあれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。

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