首をかしげて歩けない――突然起きる“前庭疾患”のサイン

はじめに

「急にまっすぐ歩けなくなった」「首が傾いていて、ぐるぐる回ってしまう」――
そんな様子が見られる時、疑われる病気のひとつが前庭疾患です。
前触れなく現れることが多く、驚く飼い主さんも多いですが、慌てず冷静に対応しましょう。
目次

前庭疾患って?

前庭疾患とは、体のバランスを保つための「前庭系」と呼ばれる神経や耳の一部に異常が起こることで、ふらつきや首の傾き、眼振(目がぴくぴく動く)などの症状が現れる状態をいいます。
多くは突然発症し、高齢の犬・猫で特に多い傾向があります。
  • 突然のふらつきや転倒
  • 首をかしげる(斜頸)
  • ぐるぐる回る(旋回運動)
  • 目が左右や上下にぴくぴく動く(眼振)
  • 食欲や元気の低下、吐き気や嘔吐
  • 顔の片側の麻痺(顔面神経麻痺)がみられることも

治療について

前庭疾患の治療は、原因によって内容が異なります

  • 特発性前庭疾患(高齢発症で原因不明の場合)は、症状の軽減と自然回復を目指して内科的なサポート治療が中心です。多くの場合、数日~2週間程度で自然と改善することが多いです。
  • 中耳炎・内耳炎が原因の場合は、抗生剤などの投薬治療が必要です。
  • 脳腫瘍・脳炎などが原因の場合は、抗炎症薬やその他の専門的治療(外科治療や抗腫瘍薬など)が検討されます。
  • 症状が強い場合は、点滴や制吐剤などで体力を維持しながら回復をサポートします。

おうちで気をつけたいこと

  • ふらつきがある間は、転倒やケガを防ぐため安全な場所で過ごさせましょう
  • ごはんや水が食べにくい場合は、食器の高さを調整したりサポートしてあげてください
  • 失禁・粗相が増える場合もあるため、寝床や生活スペースを清潔に保ちましょう
  • 回復には時間がかかることもあるため、焦らずゆっくり見守りましょう
  • 症状の悪化や、元気や食欲が戻らない場合はすぐに動物病院へ

治療で使われる主な薬と副作用

制吐剤(症状のサポート・回復を助ける薬)

メトクロプラミド(プリンペラン®)

作用
脳と消化管の両方に働き、吐き気・嘔吐を抑えます。
副作用
まれに興奮、落ち着きのなさ、下痢、眠気など。

マロピタント(セレニア®)

作用
脳の「嘔吐中枢」に直接作用し、強い吐き気や嘔吐をしっかり抑えます。
副作用
ごくまれに注射部位の痛み、食欲低下、下痢、眠気など。

プロナミド

作用
消化管の運動を活発にし、胃の内容物が逆流するのを防ぎながら吐き気を抑えます。
副作用
ごくまれに下痢、腹部の違和感、眠気、不整脈(高用量時)など。
抗めまい薬・抗不安薬(症状のサポート・回復を助ける薬)

ジアゼパム等

作用
強い不安や興奮がある場合に補助的に使用
副作用
眠気、ふらつき
抗生剤(感染症が疑われる場合に使う薬)

アモキシシリン、セファレキシン、エンロフロキサシンなど

作用
中耳炎や内耳炎などの細菌感染に対して使用
副作用
下痢・嘔吐、アレルギー反応など
ステロイド薬(炎症が疑われる場合に使う薬)

プレドニゾロンなど

作用
強い炎症や脳炎が疑われる場合に用いる
副作用
多飲多尿、免疫力低下、長期使用による副作用
その他

点滴療法

作用
食欲や水分摂取ができない場合や脱水時に、体力維持や回復をサポート
副作用
基本的に安全ですが、心臓や腎臓が弱い場合は注意が必要です

ビタミンB群製剤

作用
神経の回復やサポートのために補助的に使われることがあります
副作用
ほとんどなし

まとめ

前庭疾患は突然の症状で飼い主さんも驚きますが、多くの場合は時間の経過とともに回復することが期待できます
原因によっては早めの治療が必要な場合もあるため、「おかしいな?」と感じた時は、迷わずご相談ください。

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