猫の肥大型心筋症――“静かに進行する”猫の心臓病にご注意

はじめに

猫ちゃんが「元気がない」「呼吸が速い」「歩き方がおかしい」――
そんなとき、「肥大型心筋症」という心臓の病気が隠れているかもしれません。

目次

肥大型心筋症って?

肥大型心筋症(HCM)は、心臓の筋肉(主に左心室の壁)が厚くなって、心臓の動きや血液の流れが悪くなる病気です。
猫に最も多く見られる心臓病で、特に中高齢の猫で発症しやすいです。初期は無症状のことも多く、「知らないうちに進行している」ことも珍しくありません。

  • 呼吸が速い、苦しそう(開口呼吸、努力呼吸)
  • 元気や食欲がない
  • 隠れたがる、動かない
  • 足の麻痺(とくに後ろ足が突然動かなくなる:血栓塞栓症
  • 咳はほとんど見られません
  • 急激な呼吸困難や失神、突然死も(重症例)

治療について

根本的な完治は難しいですが、「症状を抑えながら進行を遅らせる治療」が中心です。

  • 血管拡張薬や利尿薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬などの内服薬で心臓の負担を軽減
  • 血栓症予防のための抗血栓薬(アスピリン、クロピドグレル等)
  • 呼吸困難など急性期には酸素吸入や入院治療
  • 食事管理やストレスの少ない生活も大切

おうちで気をつけたいこと

  • 呼吸数や呼吸の様子、元気・食欲を日々観察
  • 猫が急に呼吸が苦しそう、後ろ足が動かない、急に元気がなくなった場合は「一刻も早く」動物病院へ
  • 心筋症と診断された猫は、定期的な検査・薬の継続を忘れずに

治療で使われる主な薬と副作用

抗不整脈薬

アテノロール

分類
β遮断薬・抗不整脈薬
作用
心拍数を下げて心臓の負担や不整脈を抑えます。
副作用
徐脈(脈が遅くなる)、元気消失、食欲不振、
低血圧。

ジルチアゼム

分類
カルシウム拮抗薬・抗不整脈薬
作用
心臓のリズムを整え、拡張機能をサポートします。
副作用
食欲不振、低血圧、元気消失。
抗血栓薬(血栓予防薬)

クロピドグレル

分類
抗血小板薬
作用
血栓(特に後肢の血栓塞栓症)を予防します。
副作用
消化器症状(嘔吐、下痢)、まれに出血傾向。

リバーロキサバン(イグザレルト®)

分類
抗凝固薬(直接Xa因子阻害薬/DOAC)
作用
血液を固まりにくくし、心筋症の猫の血栓(特に動脈血栓塞栓症)を強力に予防します。
副作用
まれに出血傾向(血尿・血便)、食欲低下、嘔吐、下痢など。

アスピリン

分類
抗血小板薬
作用
血栓症の予防。
副作用
消化管障害(嘔吐、下痢、胃潰瘍など)、出血傾向。
利尿薬(うっ血や肺水腫がある場合)

フロセミド(ラシックス®)

分類
ループ利尿薬
作用
体の余分な水分を排出し、肺水腫やむくみを改善します。
副作用
脱水、食欲不振、低カリウム血症、腎機能悪化。
その他

ACE阻害薬(エナラプリル、ベナゼプリル等)

作用
血管を拡張し心臓の負担を和らげます。重度例や併発疾患時に補助的に使用されます。
副作用
まれに食欲不振、下痢、血圧低下、腎機能悪化。

まとめ

猫の肥大型心筋症は「静かに進行する」怖い心臓病ですが、早期発見と適切な治療で猫ちゃんを救うことができます。
「高齢になってきた」「なんとなく元気がない」「呼吸が速い」といった変化に気づいたら、早めにご相談ください。
突然の呼吸困難や足の麻痺は命に関わる緊急事態です。

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