見逃せない「胆のう」のトラブル

はじめに

胆嚢粘液嚢腫は、犬で比較的よくみられる胆嚢の病気のひとつです。
胆嚢は肝臓のそばにあり、消化を助ける「胆汁(たんじゅう)」をためておく袋のような役割をしています。

目次

胆嚢粘液嚢腫って?

胆嚢粘液嚢腫は、胆のうの中にゼリー状の粘液(ムチン)が異常にたまり、胆嚢が腫れたり胆汁の流れが悪くなる病気です。
放置すると破裂したり、重い胆管閉塞や肝臓の障害を引き起こすことがあり、命に関わることもあります

胆嚢粘液嚢腫は、初期には無症状のことも多いですが、進行すると以下のような症状が現れることがあります。

  • 食欲不振
  • 嘔吐
  • 元気消失、ぐったりしている
  • お腹の痛み(触ると嫌がる、丸くなる)
  • 黄疸(歯ぐきや白目が黄色くなる)
  • 発熱
  • 下痢

急激に悪化するとショック状態や、最悪の場合は胆のうが破裂し命に関わるケースもあります。

治療について

進行の程度や症状によって治療法が変わります。

  • 無症状または軽症の場合
    内科的にウルソデオキシコール酸など胆汁の流れを良くする薬を使ったり、食事療法を行います。
  • 症状が進行した場合や合併症がある場合
    外科手術(胆のう摘出)が必要になることも多いです。破裂や重度の胆管閉塞が起きている場合は緊急手術が命を救うこともあります。

おうちで気をつけたいこと

  • 食欲不振や嘔吐、黄疸(白目や歯ぐきが黄色い)などの症状があれば、すぐに動物病院へ
  • 肥満や糖尿病などの持病がある犬は特に注意
  • 定期的な健康診断や超音波検査で早期発見を心がけましょう

治療で使われる主な薬と副作用

胆汁排泄促進薬・肝保護薬

ウルソデオキシコール酸(ウルソ®)

作用
胆汁の流れを促進し、肝臓や胆嚢の負担を軽くします。
副作用
まれに下痢や嘔吐。
肝保護薬・サプリメント・補助療法

S-アデノシルメチオニン

作用
肝細胞の再生・保護を助けるサプリメント。
副作用
ほとんどなし。

グリチルリチン製剤(強力ネオミノファーゲンC®など)

作用
肝細胞の修復や炎症抑制。
副作用
まれにアレルギー反応。

アンチノール®

作用
モエギイガイ(緑イ貝)由来のオメガ3脂肪酸を豊富に含むサプリメント。
抗炎症・抗酸化作用があり、肝臓や胆嚢、関節、皮膚の健康維持に広く利用されています。
副作用
ほとんどありませんが、まれに軟便や食欲低下などが出ることがあります。
抗生剤(合併感染・胆管炎が疑われる場合)

アモキシシリン/メトロニダゾール等

作用
胆嚢炎や肝炎の細菌感染予防・治療。
副作用
下痢、嘔吐、アレルギー。
制吐薬・消化管運動促進薬(嘔吐や消化管症状が強い場合)

セレニア®(マロピタント)

作用
嘔吐・吐き気の強い時にしっかり止める。
副作用
注射部位の痛み、まれに元気消失。

プリンペラン®(メトクロプラミド)

作用
消化管運動促進+吐き気止め。
副作用
まれに興奮、眠気、下痢。
補液・点滴

点滴・補液

作用
脱水や電解質異常の改善、全身状態のサポート。
副作用
過剰時にむくみ・心臓負担。

まとめ

犬の胆嚢粘液嚢腫は見逃しやすいですが、放置すると重篤化しやすい病気です。
早期発見・早期治療で多くの犬の命が救われています。
「何か様子が変だな?」と感じたら、できるだけ早くご相談ください。
定期的な健康チェックが、わんちゃんの長生きと安心につながります。

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