猫の肝リピドーシス――「食べない」が続くと命に関わることも

はじめに
猫ちゃんが突然ごはんを食べなくなったり、急に元気がなくなったりしたとき、とても心配になりますよね。
そんな時にぜひ知っておいてほしいのが「肝リピドーシス」という病気です。
これは特に太り気味の猫ちゃんが急に食欲を失ったときに発症しやすい、猫特有の深刻な肝臓病です。
目次
肝リピドーシスって?
猫がなんらかの理由で数日間ごはんを食べなくなると、体は脂肪を分解してエネルギーにしようとしますが、
猫の肝臓はその脂肪をうまく処理できず、肝臓の中にどんどん脂肪がたまっていきます。
これが肝臓の機能低下や障害を引き起こし、命に関わる重篤な状態となるのが「肝リピドーシス」です。
- 数日間以上の食欲不振、まったく食べない
- 急激な体重減少
- 元気消失、ぐったりして動かなくなる
- 黄疸(目や耳、歯ぐきなどが黄色くなる)
- 嘔吐、脱水、便秘や下痢
- よだれをたらす、異常な鳴き声
「太っていた猫が急にやせた」「食欲がなくなった」時は特に注意が必要です
治療について
肝リピドーシスの治療は「肝臓に負担をかけない徹底した栄養サポート」が中心です。
- 強制給餌やチューブによる栄養補給
猫ちゃんが自力で食べられない場合は、食道や胃にチューブを設置し、十分なカロリーと栄養を補給します。 - 点滴や輸液治療
- 肝臓の保護剤やビタミン剤
- 元の病気やストレス要因の除去
- 重症例では入院管理が必要なことも多い
治療期間は数週間〜1か月以上かかることもあります。
飼い主さまの協力がとても大切で、こまめな栄養管理と通院が必要です。
おうちで気をつけたいこと
- 「太った猫が食べない」場合は、24時間以上様子を見ずにすぐに受診
- ごはんや環境が変わった時は、体調や食欲の変化をよく観察
- 早めの受診が回復の鍵
治療で使われる主な薬と副作用
栄養管理・強制給餌
高カロリー療法食(経鼻・食道・胃チューブ給餌含む)
副作用
急にたくさん与えすぎると嘔吐や下痢、再栄養症候群(体調急変)が出ることがあります。
制吐薬・消化管運動促進薬
セレニア®(マロピタント)
作用
吐き気・嘔吐の強い場合に使用。
副作用
注射部位の痛み、まれに元気消失。
プリンペラン®(メトクロプラミド)
作用
消化管運動を促進、吐き気止め。
副作用
興奮、眠気、下痢など。
プロナミド®
作用
胃から腸への食物の移動を促進し、吐き気を抑える。
副作用
下痢、眠気、まれに不整脈。
肝保護剤・サプリメント
ウルソデオキシコール酸(ウルソ®)
作用
胆汁の流れを改善し、肝臓への負担を軽くする。
副作用
ごくまれに下痢・嘔吐。
アンチノール®
作用
オメガ3脂肪酸を豊富に含み、肝臓や全身の炎症・酸化ストレスを軽減。
副作用
まれに軟便や食欲低下。
S-アデノシルメチオニン(サムイリン®、サムサラ®)
作用
肝細胞の修復と保護、抗酸化作用。
副作用
ほとんどなし。
抗生剤(感染の合併・胆管炎を伴う場合)
アモキシシリン(パセトシン®)
作用
二次感染が疑われる場合に。
副作用
下痢、嘔吐、アレルギー。
補液・点滴
乳酸リンゲル液や電解質バランス輸液
作用
脱水・電解質異常・低血糖の補正
副作用
過剰投与でむくみや心臓負担
まとめ
猫の肝リピドーシスは、「たかが食欲不振」と油断できない、命に関わる怖い病気です。
特に肥満傾向のある猫ちゃんが食べなくなったときは、一刻も早く動物病院にご相談ください。
早期対応で助かる命がたくさんあります。
日ごろから体重管理と、食欲の変化を見逃さないようにしましょう。

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