犬猫の糖尿病――水をたくさん飲む、よく食べるのにやせてきた?

はじめに
犬や猫が「最近よく水を飲む」「おしっこの量が多い」「食欲はあるのにやせてきた」――
そんなとき、もしかしたら「糖尿病」という病気が隠れているかもしれません。
目次
糖尿病って?
糖尿病は、体の中でインスリンというホルモンがうまく働かなくなり、血液中の糖(血糖値)が高くなってしまう病気です。
インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込む働きをしますが、
・インスリンが足りなくなる(犬に多い)
・インスリンは出ていても効きにくくなる(猫で多い)
ことで、血糖値が上昇します。
- 水をよく飲む・おしっこの量が増える(多飲多尿)
- 食欲があるのにやせてくる
- 元気がない、毛づやが悪い
- 下痢や嘔吐、脱水
- 白内障(犬の場合に多い)
- 進行すると意識障害やけいれん、昏睡(ケトアシドーシス)を起こすことも
治療について
糖尿病は「一生つき合う病気」ですが、きちんと治療すれば元気に暮らすことができます。
- 犬の場合:
ほとんどが「インスリン注射」が必要になります(毎日ご自宅で注射をします)。 - 猫の場合:
インスリン治療(毎日ご自宅で注射)が基本ですが、ダイエットやフード管理、糖尿病の初期であれば「寛解(インスリンなしでコントロール)」できるケースも。 - 食事療法:
糖分の吸収がゆっくりなフードや高繊維・高たんぱく食が推奨されます(猫では低炭水化物食)。 - 生活管理:
体重管理、規則正しい生活、定期的な血糖値・尿糖の測定
おうちで気をつけたいこと
- 毎日決まった時間にご飯とインスリン注射
- インスリンの量や打ち方は、必ず獣医師の指示に従う
- 体重や飲水量、おしっこの量を毎日チェック
- インスリン注射後の低血糖に注意
- 食欲や元気がなくなった、嘔吐、ぐったりした場合はすぐに受診
治療で使われる主な薬と副作用
インスリン製剤(最も重要な治療薬)
プロジンク®(PZI:プロタミン亜鉛インスリン)
特徴
猫で第一選択。作用時間が長く、血糖コントロールが安定しやすい。犬にも使用される。
副作用
投与量が多すぎると低血糖(ふるえ・元気消失・けいれん等)、注射部位の腫れやアレルギーがまれにみられます。
ランタス®(グラルギン:超長時間型インスリンアナログ)
特徴
猫でよく使用される超長時間型。血糖の安定が得やすく、インスリン寛解(インスリン離脱)を目指す症例にも。
副作用
低血糖、まれに注射部位の違和感やアレルギー反応。
レベミル®(デテミル:超長時間型インスリンアナログ)
特徴
猫や犬で使われる。猫では特に低用量でも効きやすいので用量設定に注意。
副作用
低血糖、まれに注射部位の違和感やアレルギー反応。
ヒューマリンN®(NPH:中間型ヒトインスリン)
特徴
犬の第一選択薬になることが多い。1日2回投与。猫では作用持続時間が短めで、コントロールが難しいことも。
副作用
低血糖、まれに注射部位の腫れやアレルギー反応。
インスリン治療中のご家庭での注意点
インスリン治療中は、「元気がない」「ふらつく」「けいれん」「急にぐったりする」などの低血糖症状に注意が必要です。
万が一、ご自宅でこうした症状が出た場合は――
低血糖は命に関わることもあるため、異変を感じたらすぐに動物病院に相談しましょう。
まとめ
糖尿病は「治す」というより、「うまく付き合ってコントロールする」病気です。
毎日のケアが大切ですが、多くの犬や猫が飼い主さまの協力で元気に暮らしています。
「最近よく水を飲む」「食べているのにやせてきた」などの変化に気づいたら、
早めに動物病院でご相談ください。

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