犬猫の慢性腎臓病(CKD)と急性腎障害(AKI)――似ているけど違う「腎臓の病気」

はじめに

腎臓は、体の老廃物を尿として外に出したり、水分やミネラルのバランスを整える大切な臓器です。
慢性腎臓病(CKD)」と「急性腎障害(AKI)」は、名前は似ていますが発症や経過、治療のアプローチが大きく異なる腎臓の病気です。

目次

慢性腎臓病(CKD)とは?

慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、何か月も何年もかけてゆっくり腎臓の機能が落ちていく病気です。
進行性で、腎臓の細胞は一度壊れると元に戻らないため、治すというより「できるだけ進行を遅らせて、生活の質を保つ」ことが目標になります。

  • 水をよく飲む、多尿になる
  • 食欲不振、体重減少
  • 嘔吐、下痢
  • 毛ヅヤが悪くなる、口臭が強くなる
  • 進行すると貧血や元気消失、神経症状が出ることも

急性腎障害(AKI)とは?

急性腎障害(AKI:Acute Kidney Injury)は、数時間〜数日という短い期間で腎臓の機能が急激に低下する状態です。
原因によっては適切な治療で腎臓の働きが回復することもありますが、重症化すると命に関わることも少なくありません。

  • 急に尿が出なくなる(もしくは極端に少なくなる)
  • 突然の元気消失、ぐったり
  • 食欲不振、嘔吐
  • 脱水、震え
  • 体温低下、重症の場合は意識障害

治療について

慢性腎臓病(CKD)と急性腎障害(AKI)で治療は異なります。

  • CKDの場合は、食事療法(腎臓病用療法食)、点滴や薬でのサポート、定期的な検査管理が中心です。
  • AKIの場合は、まず命を守るための緊急治療(点滴、原因の除去)」が必要です。
    早期の治療が回復率を大きく左右します。

おうちで気をつけたいこと

  • シニア期になったら定期的な健康診断や血液検査を受けましょう
  • 猫の場合は水飲み場を増やし、脱水を防ぐ工夫を
  • 危険な食べ物(ユリ、ブドウ、レーズン、エチレングリコールなど)は絶対に近づけない

慢性腎臓病(CKD)の治療で使われる主な薬と副作用

補助的な治療

皮下点滴・輸液療法

作用
慢性的な脱水防止や老廃物排出のサポート
副作用
過剰時はむくみや肺水腫など
血圧管理薬・タンパク尿抑制薬

アムロジピン(アムロジン®)

作用
血管を拡げて高血圧をコントロールし、腎臓の負担を減らします(猫で特に多用)。
副作用
歯肉肥厚、ふらつき、心拍増加、まれに食欲不振。

ACE阻害薬(エナラプリル:レニベース®、ベナゼプリル:フォルテコール®など)

作用
腎臓の血管を拡げ、タンパク尿や高血圧のコントロール。進行抑制効果も期待。
副作用
血圧低下、腎機能悪化、食欲不振、嘔吐。

テルミサルタン(セミントラ®など)

作用
アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)で、腎臓の血管に働きかけて血圧を下げたり、タンパク尿を抑えたりする効果があります。
特に猫のCKDでのタンパク尿抑制や高血圧治療に近年広く使われています。
副作用
食欲低下、下痢、まれに腎機能の急激な悪化(血液検査で経過観察が必須です)。
リン吸着剤

リーナルK®(Renal K)

作用
カリウムを含むリン吸着剤で、腸管内で食事中のリンを吸着し、体内への吸収を防ぎます。猫・犬ともに慢性腎臓病での高リン血症の管理に使われます。
副作用
まれに消化器症状(嘔吐、下痢、便秘)、高カリウム血症(用量超過時)。
造血ホルモン製剤

ネスプ®(ダルベポエチン)

作用
腎臓病による貧血改善のため、骨髄で赤血球を作る働きを強めます。持続性があり投与間隔が広いのが特徴。
副作用
高血圧、アレルギー反応、注射部位の腫れ。

エポベット®(エポエチン)

作用
同じく赤血球の産生を促進し、腎性貧血の治療に使われます。
副作用
高血圧、注射部位の炎症、発熱やアレルギー反応。
制吐剤(吐き気止め)

セレニア®(マロピタント)

作用
脳内の嘔吐中枢を直接抑えて、強い嘔吐や吐き気をしっかり止めます。
副作用
まれに注射部位の痛み、食欲低下、元気消失。

プリンペラン®(メトクロプラミド)

作用
胃腸の運動を促進し、消化管の動きを助けて吐き気を抑えます。
副作用
興奮、落ち着きのなさ、下痢、眠気など(副作用は比較的少ない)。

プロナミド®(モサプリド)

作用
消化管の動きを良くし、胃から腸への内容物の移動を促進することで吐き気を抑えます。
副作用
ごくまれに下痢、腹部の違和感、眠気、不整脈(高用量時)など。
食欲増進剤

レメロン®(ミルタザピン)

作用
脳内の神経伝達を調節し、食欲を増進させる抗うつ薬由来の食欲増進剤です。猫の食欲不振に特に有効。
副作用
眠気、興奮、まれに嘔吐やふらつき。過量投与で高血圧・震えが出ることも。

急性腎障害(AKI)の治療で使われる主な薬と副作用

輸液・点滴(静脈点滴)

輸液剤(乳酸リンゲル液、電解質バランス液など)

作用
脱水の改善、電解質や酸塩基バランスの補正。
副作用
過剰投与時の肺水腫や心臓への負担。
利尿薬

フロセミド(ラシックス®)

作用
尿の出を良くして体内の老廃物や余分な水分を排出します。尿がほとんど出ない場合などに短期間で使用。
副作用
脱水、電解質異常(カリウム・ナトリウム低下)。
原因治療薬

抗菌薬(アモキシシリン、セファレキシン等)

作用
感染症(腎盂腎炎など)の場合に使用。
副作用
下痢、嘔吐、アレルギーなど。

解毒薬(中毒原因の場合)

作用
中毒(ユリ、エチレングリコールなど)の場合は、活性炭や特異的解毒剤が用いられる。
制吐薬

マロピタント(セレニア®)、メトクロプラミド(プリンペラン®)など
 副作用:下痢や眠気、ふるえなどがまれにみられます。

制吐剤・消化管保護薬

セレニア®(マロピタント)

作用
脳内の嘔吐中枢を直接抑えて、強い嘔吐や吐き気をしっかり止めます。
副作用
まれに注射部位の痛み、食欲低下、元気消失。

プリンペラン®(メトクロプラミド)

作用
胃腸の運動を促進し、消化管の動きを助けて吐き気を抑えます。
副作用
興奮、落ち着きのなさ、下痢、眠気など(副作用は比較的少ない)。

プロナミド®(モサプリド)

作用
消化管の動きを良くし、胃から腸への内容物の移動を促進することで吐き気を抑えます。
副作用
ごくまれに下痢、腹部の違和感、眠気、不整脈(高用量時)など。

まとめ

慢性腎臓病(CKD)と急性腎障害(AKI)はどちらも命に関わる大切な腎臓の病気ですが、発症や進行、治療方法が大きく違います
「おしっこの量が変わった」「水をよく飲むようになった」「急に元気がなくなった」など、普段と違う様子に気づいたら、早めに動物病院でご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次