犬猫の尿失禁――おしっこが漏れてしまう、その理由と対策

はじめに

「最近、わんちゃん・ねこちゃんがおしっこをトイレ以外の場所でしてしまう…」「寝ている間や歩いているときに、おしっこがポタポタ漏れている」――そんなお悩みを持つ飼い主さまも少なくありません。
このような症状は「尿失禁」と呼ばれます。

目次

尿失禁とは?

尿失禁とは、「自分の意志とは関係なくおしっこが漏れてしまう状態」のことです。排尿を我慢する力が弱くなったり、膀胱や尿道の筋肉がうまく働かなくなることで起こります。
高齢の犬猫、特に避妊手術を受けた雌犬や老齢猫で目立つことが多いですが、若い動物でも起こることがあります。

排尿しようとしていないのにおしっこが漏れてしまうため、「粗相」や「しつけの問題」と誤解されることも多いですが、実は体のトラブルや病気が隠れていることが少なくありません。

  • 寝ている間にベッドが濡れている
  • 歩いているときにおしっこがポタポタ漏れる
  • トイレの外で突然おしっこをしてしまう
  • 外陰部や後ろ足がいつも濡れている、かぶれや臭いが気になる

治療について

原因に合わせて治療法を決めます。

  • ホルモン剤(エストロゲン製剤など)の投与(避妊雌犬の場合)
  • 尿道の筋肉を強くする薬(フェニルプロパノールアミンなど)
  • 抗菌薬や消炎剤の投与(感染や膀胱炎が原因の場合)
  • 神経疾患の場合は基礎疾患の治療やリハビリ
  • 先天性異常の場合は手術が必要になることも

お薬でコントロールできるケースも多いですが、長期間の管理や定期的な検査が大切です。

おうちで気をつけたいこと

  • こまめなトイレ掃除と、清潔な寝床の用意
  • おしっこで皮膚がかぶれないように清拭
  • トイレの回数や様子をよく観察し、変化があれば早めに受診
  • 粗相を叱らず、まずは体調や病気のサインと考えましょう

治療で使われる主な薬と副作用

尿道括約筋強化薬

プロパリンシロップフェニルプロパノールアミン)

作用
尿道の筋肉を強くして、おしっこを我慢しやすくします。特に避妊後の雌犬の尿失禁によく使われます。
副作用
興奮、落ち着きのなさ、血圧上昇、心拍増加など(高齢や心臓病がある場合は注意)。

エフェドリン(エフェドリン®など)

作用
尿道括約筋を刺激して、尿失禁を防ぎます。
副作用
興奮、不眠、頻脈、食欲低下など。
女性ホルモン製剤(エストロゲン製剤)

ジエチルスチルベストロール(DES®など/日本では入手困難なことが多い)

作用
女性ホルモンを補うことで、尿道の筋肉を強くします。
副作用
長期大量投与で骨髄抑制(貧血)など。日本では限定的。

エストラジオール(エリスリールなど)

作用
同様に女性ホルモン補充によって尿道括約筋の機能を改善します。
副作用
乳腺腫瘍、子宮疾患、骨髄抑制など(未避妊や高用量時に注意)。
神経系に作用する薬

ベサコリン®(ベタネコール)

作用
膀胱の収縮力を高めて、おしっこを出しやすくする薬(神経疾患の場合に使用)。
副作用
下痢、唾液分泌増加、吐き気、腹痛。

ジアゼパム(セルシン®など)

作用
尿道や膀胱括約筋をゆるめて、おしっこを出しやすくする(神経疾患の子に補助的に)。
副作用
眠気、ふらつき、食欲低下。
その他・補助療法

抗生剤

作用
膀胱炎や尿路感染症がある場合に使用。
副作用
下痢・嘔吐・アレルギーなど。

生活管理

清潔な寝床の維持・皮膚のケア、頻繁なおむつ交換や、衛生的な環境づくりも大切です。

まとめ

尿失禁は、「年のせい」や「しつけの問題」と誤解されがちですが、体の異常や治療できる病気が隠れていることも多いです。
もし「おしっこの失敗」が続いたり、気になる症状がある場合は、ぜひ早めに動物病院でご相談ください。
ご家族とペットが快適に暮らせるよう、原因に合わせた最適なケアをご提案します。

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