犬猫の下部尿路疾患――おしっこのトラブルにご注意!

はじめに
犬や猫が「おしっこのトラブル」で動物病院を受診することは、とても多くあります。
とくに膀胱炎や尿路結石、猫下部尿路疾患は、身近で注意が必要な病気です。
目次
下部尿路疾患とは?
下部尿路疾患は、膀胱や尿道に起こる病気やトラブルの総称です。
具体的には、
- 膀胱炎(感染性・特発性)
- 膀胱結石・尿道結石
- 尿道閉塞
- 膀胱腫瘍
- 尿路奇形
などが含まれます。
猫では「特発性膀胱炎」「尿道閉塞」が、
犬では「感染性膀胱炎」「膀胱結石」が特に多く見られます。
- おしっこが何度も出る、少しずつしか出ない(頻尿)
- 排尿時に痛そうに鳴く、力む
- 血尿が出る
- トイレ以外の場所で排尿する
- おしっこが全く出なくなる
- 陰部をしきりに舐める
- 元気や食欲の低下
特にオス猫は尿道が細いため詰まりやすく、完全閉塞の場合は命に関わる緊急事態となりま
治療について
- 細菌感染 → 抗生剤
- 結石 → 溶解療法・食事管理・手術
- 猫の特発性膀胱炎 → ストレス緩和と対症療法
- 腫瘍や奇形 → 外科的治療や補助療法が中心になります。
- 尿道閉塞の場合は緊急処置(カテーテルでの排尿確保)が必要
おうちで気をつけたいこと
- トイレの回数や排尿姿勢、尿の色・量の変化を日々観察
- 水分補給を促す(新鮮な水を常に用意)
- ストレスを減らす工夫(多頭飼い、環境変化に配慮)
- 排尿が「まったく出ない」場合はすぐに緊急受診
- 療法食や薬は獣医師の指示通りにしっかり続ける
治療で使われる主な薬と副作用
抗生剤(細菌性膀胱炎など感染が疑われる場合)
アモキシシリン
作用
膀胱炎などの細菌感染を抑える、幅広く使われる抗生物質。
副作用
下痢、嘔吐、アレルギー反応。
セファレキシン
作用
尿路感染症に対してよく使われる抗生剤。
副作用
同上。
エンロクリア®(エンロフロキサシン)
作用
ニューキノロン系抗生剤。広範囲の細菌に効果があり、重度の尿路感染や他の抗生剤が効かない場合にも使用されます。
副作用
まれに嘔吐・下痢、若齢犬猫では関節障害(成長期は原則禁忌)、長期連用時は網膜障害(特に猫で注意)。
鎮痛剤・消炎鎮痛薬
メロキシカム(メタカム®)、ロベナコキシブ(オンシオール®)
作用
非ステロイド系消炎鎮痛薬。膀胱炎や尿路閉塞後の痛み・炎症を緩和。
副作用
嘔吐、下痢、腎臓への負担(長期連用は注意)。
ブトルファノール
作用
中枢神経に働くオピオイド系鎮痛薬。尿路閉塞や膀胱炎など急性の強い痛みを緩和。
副作用
眠気、ふらつき、まれに興奮、食欲低下、呼吸抑制(高用量時)。
ブプレノルフィン(レペタン®)
作用
オピオイド系鎮痛薬。作用時間が比較的長く、猫にも安全に使いやすい。中等度〜強い痛みに使用。
副作用
眠気、ふらつき、食欲低下、まれに呼吸抑制。
平滑筋弛緩薬・鎮痙薬
プラゾシン
作用
尿道の筋肉をゆるめて、排尿を助ける。
副作用
血圧低下、ふらつき、食欲不振。
ジアゼパム(セルシン®)
作用
尿道のけいれんを緩め、排尿をスムーズにする。
副作用
眠気、ふらつき、食欲低下。
結石溶解・再発予防用療法食
療法食(ストルバイト結石溶解食、pHコントロール食)
作用
結石の種類に合わせて尿を酸性やアルカリ性に調整し、結石の溶解や再発予防に。
副作用
合わない場合に食欲低下や下痢が出ることも。
ストレス緩和・膀胱保護薬
イミプラミン
作用
FIC(特発性膀胱炎)の再発抑制、ストレス緩和作用。
副作用
眠気、食欲低下、口渇、まれに不整脈。
グルコサミン製剤
作用
膀胱粘膜の保護をサポート。サプリメントとして併用。
副作用
ほとんどなし(まれに下痢)。
その他
点滴・輸液
作用
尿路閉塞や腎機能低下時の支持療法。
副作用
過剰投与時にむくみや心臓負担。
まとめ
下部尿路疾患は早期発見・早期治療がとても大切な病気です。
特にオス猫の尿道閉塞は命に関わる緊急事態ですので、
「おしっこが出ない」「何度もトイレに行く」などの異変に気づいたら、
迷わず動物病院にご相談ください。

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