クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)――「お水ばかり飲む」「お腹がぽっこり」は要注意!

はじめに
最近、お腹がぽっこりしてきた」「毛が抜けて皮膚が薄くなってきた」「やたらと水を飲み、オシッコの量が増えた」――などの変化に気づいたら、
それは「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」かもしれません。
目次
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)って?
クッシング症候群は、副腎(腎臓の上にある小さな臓器)から出る「コルチゾール」というホルモンが、必要以上に多く分泌される病気です。
このコルチゾールは、ストレスや代謝、免疫など体のさまざまなバランスを調整していますが、多すぎると全身にさまざまな不調が現れます。
- 水をたくさん飲む・おしっこが多くなる(多飲多尿)
- お腹がぽっこりふくらむ(腹部膨満)
- 食欲旺盛(異常に食べる)
- 毛が抜けやすい、皮膚が薄くなる
- 元気はあるのに、筋肉が落ちてきたり、動きが鈍くなる
- 息が荒くなる
- 皮膚に黒ずみや色素沈着、石灰沈着が見られることも
- 感染症(膀胱炎・皮膚炎)が治りにくくなる
- まれに糖尿病や高血圧を合併
「水の減りが早い」「トイレの量が多い」「太っていないのにお腹だけふくらむ」などがサインです。
治療について
ほとんどの犬で「生涯治療・投薬」が必要となりますが、適切な治療で良好な生活を維持できることが多いです。
- 下垂体性(PDH)の場合
お薬でホルモンの分泌をコントロールする内科治療が中心。 - 副腎腫瘍性(AT)の場合
腫瘍が手術可能なら外科摘出も検討されますが、高齢犬やリスクが高い場合は内科治療が選択されることが多いです。 - 医原性(ステロイド剤長期使用)の場合
原因薬剤の減量や中止(獣医師指示のもと)を行います。
おうちで気をつけたいこと
- 日々の飲水量やおしっこの量、食欲や体型の変化をよく観察
- 皮膚や毛並みの状態にも注意
- 急な元気消失や嘔吐、下痢、食欲不振があれば早めに受診
治療で使われる主な薬と副作用
副腎皮質ホルモン合成阻害薬
トリロスタン(アドレスタン®など)
作用 副腎でコルチゾール(ホルモン)が作られるのを抑える薬。下垂体性・副腎性どちらにも使われ、最も一般的。 副作用 食欲低下、元気消失、嘔吐・下痢、稀にアジソン病(副腎不全)。
※薬投与後3〜4時間後の採血で血中コルチゾール値を測定します。または、ACTH刺激試験で測定。(治療開始時は1〜2週間後に血液検査、その後は数値・症状が安定していれば数ヶ月ごとにチェック)
ミトタン(オペ-DD®など)
作用
副腎皮質細胞自体を破壊し、コルチゾールの分泌を抑える(強力)。
副作用
嘔吐、下痢、食欲低下、重度の場合はアジソン病に進行するリスク、まれに肝障害。
※投与開始後や増量時はACTH刺激試験でのコルチゾール評価が推奨されます。(具体的なタイミングは施設のプロトコールや薬剤ごとに異なるが、治療開始後1〜2週間後、その後は数ヶ月ごとにチェック)
併発症・症状の管理に使う薬
抗高血圧薬(アムロジピンなど)
作用
高血圧のコントロール
副作用
歯肉の腫れ、稀に食欲低下
インスリン
作用
糖尿病を併発した場合に使用
抗菌薬
作用
膀胱炎や皮膚炎の併発時
まとめ
クッシング症候群は、中高齢犬に多く「水をよく飲む」「お腹が出てきた」「毛が抜けやすい」などが特徴の病気です。
長く付き合っていく病気ですが、きちんと治療し、日々の変化に気づいてあげることで元気に暮らせます。
気になる症状があれば、早めに動物病院にご相談ください。

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