猫のお口、ちゃんと見たことありますか?歯肉炎・口内炎とそのサイン

猫ちゃんのお口のトラブル、気づいてあげられていますか?
「なんとなくごはんを残すようになった」
「カリカリよりも、やわらかいごはんを好むように…」
そんなちょっとした変化、実は“お口の痛み”が原因かもしれません。
今回は、猫の口腔トラブルの代表格である「歯肉炎」「口内炎」について、
獣医師の視点からわかりやすく丁寧に解説していきます。
猫の「歯肉炎・口内炎」ってどんな病気?
犬の歯周病が「歯石の蓄積から始まることが多い」のに対して、猫ちゃんのお口のトラブルでは
「歯肉炎」や「口内炎」が主体となることが多い というのが、私の実感です。
特に猫に多く見られるのが、
「慢性歯肉口内炎」という状態です。
これは単なる歯周病とは異なり、強い炎症が歯肉だけでなく、
口の奥の粘膜や舌のふち、喉の入口(咽頭部)まで広がってしまう、かなり厄介な病気です。
歯肉炎(しにくえん)
- 歯と歯ぐきの間に炎症が起こり、歯ぐきが赤く腫れたり、出血したりする状態。
- 歯石や細菌の蓄積が主な原因。
- 早い子では2〜3歳くらいから発症することもあります。
口内炎(こうないえん)
- 歯ぐきだけでなく、口の中全体(頬の内側、舌のふちなど)に炎症が広がった状態。
- 慢性的な炎症が強く、猫が激しい痛みを感じていることも。
- 原因がはっきりしないケース(特発性口内炎)もあります。
どんな症状があらわれる?
猫ちゃんは痛みを隠すのがとても上手。
でも、よく観察すると小さなサインが出ていることがあります。
- ごはんを残す、食べづらそうにする(特にカリカリ)
- よだれが増える、口元が汚れる
- 食べるときに「ギャッ」と鳴く・顔を振る
- 口の周りを気にして前足でこする
- 口臭がきつくなる
- お顔を触られるのを嫌がる
こうした様子があれば、早めに動物病院でお口の
チェックをしてもらいましょう。
ただし、
慢性歯肉口内炎では、見た目にもはっきり分かるような強い炎症が起きます。
- 歯と歯ぐきの境目が真っ赤に腫れ、触ると出血する
- 炎症が進むと、舌の奥や頬の裏側、のどの粘膜まで赤くただれる
こうした変化があると、猫ちゃん自身も強い痛みを感じるようになります。
原因は?体質?ウイルス?歯石?
猫の歯肉炎・口内炎には、いくつかの原因や関係する因子があります。
歯垢・歯石の蓄積
- 人間と同様、歯の汚れから細菌が繁殖し、歯ぐきに炎症を起こします。
ウイルスの関与
- 猫カリシウイルス、猫白血病ウイルス(FeLV)、猫免疫不全ウイルス(FIV)などが関与することもあります。
特にFIV(猫エイズウイルス)陽性の子では、口腔内の慢性炎症がコントロールしにくいことも多いです。 - 特に慢性口内炎では、免疫異常との関連が指摘されています。
免疫反応の異常
- 体が“自分の歯”や“細菌”に過剰に反応してしまい、慢性的な炎症が続いてしまうケース。
- いわゆる 難治性口内炎(慢性潰瘍性口内炎)と呼ばれる状態。
治療方法は?
この病気は慢性化しやすく、
完治が難しい場合も多いため、
治療の基本は「いかに炎症を抑え、痛みを軽減し、猫の生活の質(QOL)を維持するか」にあります。
治療の選択肢としては、
① スケーリング(歯石除去)
- 歯垢・歯石を取り除き、お口の中の細菌バランスを整える処置。
- 歯肉炎の段階であれば、これだけでも症状が改善することがあります。
- 全身麻酔が必要なため、事前の健康チェックも大切です。
② 抗生物質・抗炎症薬・免疫抑制薬の使用
- 細菌感染を抑えたり、痛みや炎症を和らげたりする目的。
- 根本的な解決にはならないこともありますが、痛みの緩和には重要です。
③ サプリメントや口腔ケア製品
- 口内環境を整える補助療法として有用です。
④ 抜歯治療(必要に応じて)
- 難治性の口内炎では、抜歯が最も有効な治療法となることもあります。
- 全ての歯を抜かなくても、奥歯を中心に一部抜歯することで症状が大きく改善することも。
特に「全臼歯抜歯」や「全顎抜歯」は、聞くと驚かれる飼い主さんも多いのですが、
抜歯によって炎症の元が減ると、劇的に症状が改善する猫も多く見られます。
抜歯後でも、ねこちゃんは意外としっかりごはんを食べてくれるんですよ。
予防できるの?
歯肉口内炎は完全に予防するのが難しい病気ではありますが、
歯垢をためない・口内を清潔に保つことで、発症や悪化のリスクを減らすことは可能です。
特に有効な対策は
- 歯みがきに慣れていない子は、まず口元を触ってガーゼで拭く
- 毎日の歯みがき
- デンタルジェルや口腔ケア用のサプリなどの補助アイテムを活用
- 定期的な口腔内チェック(健康診断時など)
もちろん、すでにお口が痛くなってしまっている猫ちゃんに無理な歯磨きをするのは逆効果なので、
その場合はまず痛みを取る治療が最優先です。
最後に
猫のお口の病気は、
「なんとなく元気がない」「食べ方が変わった」など、ささいな変化から始まることが多いです。
猫ちゃんはガマン強くて、お口の中の異常を見せづらい動物です。
だからこそ、飼い主さんのちょっとした気づきが、早期発見・早期治療のカギになります!
| お口の状態 | 早期ケアでできること |
|---|---|
| 歯肉炎 | スケーリングや薬で改善可能 |
| 軽度の口内炎 | 症状を和らげながらコントロール |
| 慢性口内炎 | 抜歯や長期管理でQOL向上をめざす |
「最近ごはんを残すようになった」
「口をくちゃくちゃすることが増えた」
「なぜか怒りっぽくなった気がする」
そんな小さな違和感が、実は猫ちゃんからのSOSかもしれません。
気になることがあれば、
ぜひかかりつけの先生に相談してみてください。
猫ちゃんと飼い主さんが、毎日を笑顔で過ごせますように

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