犬猫の“今の元気”を見える化する健康診断のヒミツ

「うちの子、毎日元気にごはん食べてるし、お散歩も楽しそうだし、病院に行く必要なんてないよね?」
そんなふうに思われる飼い主さん、実はとても多いんです。
でも、実際には見た目が元気でも、体の中でじわじわ進んでいる病気はたくさんあります。
その“見えないサイン”に気づくための大切な手がかりが、健康診断なんです。
目次
健康診断って何をするの?
健康診断というと、「血液検査だけでしょ?」と思われることもありますが、
実はもっとたくさんの角度から“今の健康状態”を見ています。
以下のようなステップで全身をチェックしていきます。
身体検査
獣医師の“目・耳・手”による基本の診察
獣医師の“目・耳・手”による基本の診察
健康診断の最初に行うのが、視診・聴診・触診を中心とした「身体検査」です。
これはすべての診察の基本であり、とても大切なステップです。
視診(ししん)
目の濁り、皮膚や被毛の状態、歯や歯ぐき、耳の中の様子などを“目で見て”チェックします。
ちょっとした赤みや変色、しこりなどもここで気づくことがあります。
聴診(ちょうしん)
心臓の音やリズム、肺の呼吸音を“聴いて”確認します。
心雑音や不整脈、肺の異常音など、初期の心疾患のサインが見つかることもあります。
触診(しょくしん)
お腹を優しく触って臓器の張りやしこりを探したり、リンパ節の腫れ、関節の可動域などを“手で触って”調べます。
しこりや腫瘍、関節の異常など、見た目ではわからない異変をキャッチできる検査です。
血液検査
体の中の“働き”を数値で確認
体の中の“働き”を数値で確認
肝臓、腎臓、すい臓、ホルモンバランス、貧血や炎症反応など、内臓の働きを数値で確認できます。
症状が出る前の「隠れた異常」を見つけるのにとても役立ちます。
たとえば、初期の腎不全や甲状腺の異常は、血液検査でわかることがあります。
レントゲン検査
骨と内臓の“かたち”をチェック
骨と内臓の“かたち”をチェック
胸やお腹の臓器の大きさ・位置・形、骨や関節の状態を確認します。
心臓病の評価や、関節・脊椎の異常のチェックにもとても有用です。
超音波検査(エコー)
お腹の臓器も、心臓もリアルタイムで観察
お腹の臓器も、心臓もリアルタイムで観察
肝臓・腎臓・脾臓・膀胱・子宮など、体に負担をかけずに臓器の中の様子をリアルタイムで確認できる検査です。
腫瘍、結石、子宮のトラブルなども早期に見つけられることがあります。
また、心臓の動きや弁の状態、血液の流れなども超音波で詳しく見ることができます。
心雑音が聴こえた場合などに、
「どのくらい進んでいるのか」「治療が必要か」を判断するうえでとても大切な検査です。
レントゲンとエコー、どう違うの?
レントゲンもエコーも、体の中を“見る”ための検査ですが、それぞれ得意なことが違います。
スクロールできます
| 検査名 | 見えるもの | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| レントゲン | 骨や臓器の 形・位置・大きさ | 一瞬で全体像を把握できる、空気や骨の観察に強い | 骨折、心臓の拡大、肺の異常、便やガスのたまりなど |
| エコー (超音波) | 臓器の中の構造や動き | リアルタイムで観察、液体や柔らかい組織に強い | 腫瘍、膀胱結石、心臓の動き、子宮や腎臓の変化など |
たとえば「心臓病かも?」というときは、
レントゲンで心臓のサイズや肺の状態を見て、エコーで弁や血液の流れを確認することで、より詳しく評価できます。
また、「お腹が張っている」というときにも、
レントゲンで臓器の位置やガスのたまりを見て、エコーでしこりや炎症がないかを確認する、といったふうに使い分けています。
組み合わせることで見えてくる“本当の健康状態”
それぞれの検査は単独でも役立ちますが、
組み合わせることで見逃しが減り、より正確で深い情報が得られます。
たとえば、
- 身体検査でお腹に違和感 → エコーでしこりを発見 → 血液検査で影響を確認
- 聴診で心雑音 → レントゲンとエコーで心臓の拡大や弁の状態をチェック
- 身体検査も異常なく普段も元気 → 血液検査で腎臓の数値が上昇 → 早期の慢性腎臓病の可能
といった具合に、総合的に判断することで病気の早期発見につながるのです。
健康な今こそ、チェックのチャンス
「症状が出てからでいいや」と思ってしまう気持ち、すごくよくわかります。
でも、病気がある程度進行してからでは、治療が長引いたり、完治が難しかったりすることもあります。
まとめ
健康診断は“今の安心”と“未来の備え”
健康診断は、病気があるかどうかを調べるだけではありません。
「今のこの子の健康状態を知っておく」ことは、
これからの体調の変化に早く気づくための大切なヒントになります。
特にシニア期(7歳以上)に入ったら、
半年に1回の全身チェックをおすすめしています。
最低でも年に1回の健診が理想です。
若い子でも1年に1回の健康診断は、これからの健康を守る大切な習慣になります。
そして何より――
“今も元気”を確認することで、安心して笑顔で過ごせる毎日につながります。

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